テレビ番組の2025年2月7日のNHKあさイチで特集された、プレミアムトークのゲスト、料理人の野村友里さんのお店、料理、食材や子ども向け料理本「とびきりおいしい おうちごはん」に込める思いとエピソードがとても良かったのでまとめました。
この投稿をInstagramで見る
|
美味しい素材との出会い
野村友里さんは美味しい素材に出会うと「なんでこんなに美味しいの」と聞いて回っています。生産者の元を訪ねて育った環境から体験しています。その料理の大ファンなのが内田ややこさんです。出来立てが美味しいのは当たり前ですが、冷めて時間が経ってもゆりさんの料理は味が溢れているということです。
料理人兼アーティスト
料理人の姿をしたアーティストだと評価されています。料理を作るだけでなく、映画監督もやっています。様々な人を取材しながら食に関するドキュメンタリーを作りました。アニメの豆腐小僧を企画して世界に配信しました。声優さんは加藤登紀子さん。日本の伝統食の魅力を分かりやすく伝えようとしました。声優も自分で豆腐小僧をやりました。料理人の枠にとどまらない野村さん、実際にはどんな方なんでしょうか。
野村さんのお店、「ばばじじ」の紹介
去年、野村友里さんの思いがこもったお店「ばばじじ」がオープンしました。祐天寺商店街(東京都目黒区)です。一軒家スタイルのお店です。
花屋さんとのコラボ 共通点は「土」
植物と食事が一緒に楽しめます。お店の中はおしゃれで少しレトロかつリラックスできる雰囲気ですね。食べ物と花屋さんでは土を分かち合っています。愛でるのか、食べるのか、の違いです。
土にかえる素材を採用
土に帰る素材を使うという理由で壁紙には手すりを採用しました。大きなテーブルは樹齢300年の木がまるごとそのまま使われています。丸木のままです。火だったら燃やせばいいし、土に帰るというのも分かりやすいです。自分たちの大先輩がいると思うと安心感があります。朝収穫された無農薬栽培が販売されることもあります。
朝食イベント
朝食イベントを開催しました。朝どれ野菜などを食べてもらう企画です。普段はこのお店での調理はしませんが、今回はみずから調理も行います。午前8時からのイベントでしたが、すぐに満席になりました。朝食は2種類で、発酵キャベツは調味料として使った発酵キャベツのポトフと、里芋ペーストを使ったたっぷりの野菜とポーチドエッグのトーストでした。
お客さんの反応
お客さんから美味しすぎると好評だったのがポーチドエッグです。北海道の根室からわざわざ取り寄せたという卵です。生産者から直接見聞きしたことをお伝えするようにしています。寒くて環境の厳しい場所で育った鶏は一流の強さがあります。平飼いで走りながら飼育しています。餌も地元の海藻や酒粕を食べていて自然な卵は黄色みが薄くて柔らかいそうです。そしてこの白身を何度でも食べたくなるなと思いました。
人参とキャロットケーキ
人参を皮ごと使って安心できる人参だと皮と身の間が一番味が濃いですと丁寧に説明しています。人参のケーキ、キャロットケーキも大好評でした。グルテンフリーでヘルシーに焼き上げています。2時間の間、常に満席状態で出勤前に立ち寄った方もいます。
お客様の感想
お客さんは朝から幸せな気持ちで幸福度が高いと笑顔がこぼれます。作っている工程を見ながら食べられるというのも体に嬉しいです。心が温まる料理でした。今日1日穏やかな気持ちで過ごせそうだという口コミです。
朝食の重要性
やっぱり朝食は大事ですし、行動制限から戻って朝食を大事にする人もお店も増えてきたように感じています。「リトルショップオブフラワーズ」というお店とコラボをしています。植物も多い綺麗なお店ですが、リラックスして欲しい、自然を感じてほしいということです。
「ばばじじ」という店の名前の意味
店の名前は「ばばじじ」です。経年変化、老化していくということです。食べ物も時間が経つと美味しくなるものはありますよね。そういう風に楽しみにしてほしいということです。
野村友里さんのお店、「ばばじじ」の場所や公式サイト
野村友里さんのお店、「ばばじじ」の場所や公式サイトは以下のようになっています。
店名:babajiji house
住所:目黒区祐天寺1-22-7
電話番号:03-6452-3723
公式サイト(インスタ):URLはこちら
営業時間:変わるようなのでインスタの固定のところを確認してください。→こちら
地図:
食材の選定とその背景に注目する野村友里さんの姿勢
お野菜は都内の近いものを使っていますが、日本には北海道から沖縄まで様々な自然環境があって豊かです。北海道根室は最東端で、今頃は流氷が流れ着くような寒さの厳しい場所ですが、そんなところでできた卵はすごく大きくて白身が美味しいです。
料理の始まりとシェフの考え方
野村さんがわざわざ生産者の元を訪ねて料理を作るのは意味があります。料理はまな板の上から始まるのではないと考えています。そういうシェフの方が増えてきています。30年前は「厨房は厨房」と分業が重視されていましたが、今はこういう考え方も広がっています。美味しい料理を作りたければ自分たちが生産者のところまで行くべきという時代になってきました。
生産者との出会いと料理の変化
そこで出会いがあって持ち帰って、その背景を生かしたい。普段捨ててしまう葉っぱや皮も使ったりして調理方法も変わっていきます。それは生産者を訪れたからこそ味わえるものです。徳島県神山町のにんにく農家を訪れました。あわとくという番組です。有機栽培をしてる農家です。
生産者の信念を引き出す
ここで一番重要なのが、土地だということです。生産者の信念を引き出すようにしています。
こちらの方は「有機的な土を作らなければいけません。冬場に葉っぱを集めてきて土の力を蓄えていくようにしています。」と語っていました。
無農薬栽培、有機農法は大変ですね。
キャベツの中に蝶々が入らないようにネットをかぶせます。蝶々が入ると青虫だらけになってしまいます。しかし、無農薬なのでキャベツはその場で葉をちぎってかじることができます。安心です。
食材選びと訪問の重要性
キャベツだったらこういう風に育てられたい、牛だったらこういう人に育てられたいと波長が合ってしまいます。行かないとやっぱり目に見えない背景や環境が分かりません。同じ1つの人参でもそういったものは感じられるので、できるだけ生産者の元を訪れることを大事にしています。
農家訪問の体験で背景を知る
栃木県の農家を訪れた際には一緒に田植えをしました。自分では田んぼを持っていませんが、いろんな機会があるたびにこの泥の中に足を裸足で入れるととても気持ちいいです。裏に森があって湧き水があって美味しい水の下流に田んぼがあって虫など自然があります。
背景を知れば知るほど心も満たされる
最初は憧れもあったと思いますが、知れば知るほど楽しくなりました。植物が育つ環境ということは人間にも良いと考えられます。背景を知れば知るほど心も満たされます。
牧場訪問
豚や牛の牧場では餌にも関心があります。餌にこだわられている方は行くと「食べてみる?」と言われます。それぐらいオープンにしています。分からないところはありません。一点の曇りもありません。
生産者訪問の意義とお付き合いの継続
でも忙しい中、生産者を訪ねることは大変だと思いますが、野村さんはそれほど気負いなく長くやってる間に必然的に行く回数がちょっとずつ増えていきました。そしてお付き合いを継続させることが大事だと考えています。2年前までお店をやっていたので、特にそういったつながりやご縁を大事にしていきたいということです。
新玉ねぎと梅干しのスープ
この日は出演者のためにオニオンスープを作ってきました。お椀にまるごと玉ねぎが入っています。新玉ねぎと梅干しのスープです。素敵ですね。
レシピ
「おだし」としてお酒を飲んだ後に、朝イチで飲むといいなと思って作られました。玉ねぎの甘味と多めの酸味を感じます。そして、温泉ではないですが体があたたまってホッとします。普通のカツオ昆布だしに新玉ねぎに梅干しを入れると、塩加減と酸味で玉ねぎの甘さが引き出されます。梅干しは疲れている時に元気になり、鰹節は回遊魚なので、疲れ知らずだと考えています。
昔から日本にある調味料の力
そういうだしの力や梅干しのように昔から日本にある調味料の力を考えています。今回は塩も醤油も入れていません。大地をそのまま頂いているような感じです。まさに内田也哉子さんが言う滋味とはこういうことでしょうか。
内田也哉子さんから見た野村さん
17年来の友人の内田也哉子さんによると、野村さんはいつも老若男女に囲まれていて、素敵だなと感じています。子供や動物が何の利害関係もなしに寄せられる人です。家にも遊びに来てくれて、子供たちが小さかった時は一緒になっておままごとを延々とやってくれていました。内田さん自身は大人なのに置き去りにされていました。相手が子供だろうと大人だろうと共鳴し合える才能を持った方だと考えています。もともとはきちっと教育を受けられたお嬢様の佇まいですが、ちょっとアナーキーな感じが吹き出る瞬間があります。
突発的なライブイベント
先日は「急にライブをやるから、私は料理、ややちゃんは詩を書いて朗読して」と突然言われました。野村さんが調理する音と楽器が奏でる音を一緒に録音する公開録音ライブです。野村さんのお店で開催されました。内田さんは料理のレシピやポエムも読み上げていきます。当日もどう始まってどうやって行くのかハラハラドキドキしていましたが、その興奮も含めて楽しんでいました。
いつも説明がなくてインスピレーションの人だということです。思い立った時に友達としていつでもついていけるし、ついて行きたいなと思っています。号令をかけたらついていくよという友達がたくさんいて、一緒になってライブを作り上げてしまう摩訶不思議なマジックを使います。料理人の姿をしたアーティストだと思います。
音と料理のコラボレーション
野村さんは音楽は全くやりませんが、食器と楽器は食べる器と楽しむ器です。いい作家の調理器具はいい音がします。そこでこの音をきっかけにして曲を作りました。
野村さんは1時間の間に3品を作るということに集中しました。おライブのあいさん、ミュージシャンの方は曲をその場で作っていきました。料理にもリズムは重要です。それを拾ってくれた友達がいたのが良かったと感じています。
食の鼓動ライブ
他にも様々なライブを行っています。特に話題になったのは「食の鼓動」です。いろんな分野の方が集まりました。ステージを北海道根室の森に見立てて、その食材、鹿を仕留めて解体して料理に仕立て上げていきました。リアリティにこだわりました。元は根室の森まで行って、鹿の鳴き声や漁師の銃声を録音してきました。鹿って結構すごい鳴き声なんですね。生々しいです。銃声も生々しいです。音響さんがいると鹿に警戒されてしまいますので、実際その日は本当に鹿を取ることはできませんでした。
本当は皆さんに森の中に入ってもらいたかったし、森の中で鹿は漁師さんと一対一になって一瞬の迷いで打たれてしまうと生死が分かれます。
視覚に頼らない表現
いつも私たちは視覚に頼っていますが、今回は視覚に頼らずに創造性と記憶を呼び起こす表現を使って、食べ物が体に入ることを表現できないか、体験してもらえないかということを考えたのがこのイベントです。そして演出として、野村さんはこのカーテンの奥で他の料理人の方と料理をしています。その姿はシルエットでしか見えません。
料理する音とシルエットしか観客には見えない状態でした。どんなことをやっているんだろうと気になりますよね。
香りの演出
次は五感に訴えるための香りです。調香師の方に香りを作ってもらいました。深い森の中、血、水、肉を焼くなど。進行に合わせて香りを会場に振りまいてもらいました。
鉄砲で打たれた後解体される時に出る血をイメージしてもらいました。アロマなので、最初はいい香りですが、後から血に含まれる鉄の臭いがしてきます。そして体に残っていきます。目を閉じたりした時にはもっといろんな景色が浮かんでくるのではないでしょうか。
生き物が食べ物になるまで
鹿が走っている時に美味しそうとは思いません。しかし鹿が撃たれた後、鹿がものすごいスピードで解体されて肉の塊になっていきます。その時点では美味しそうだとは思いません。しかし火が入っていい匂いがしてくると美味しそうと感じていきます。
食材の経過と共通の話題
生きているものは調理されて体の中に入っていくという経過を、いろんな専門家、お医者さんや木工の作家などと一緒に共通の話題として考えてきました。そして、このイベントの最後は、この鹿肉の料理をお客さんは食べずに終わります。
最後には2つの心臓音が1つになっていきます。考えさせられますね。食べる高揚感、撃たれた時の静けさ、最終的に残るのは記憶です。包丁の最初の音を聞いて家のキッチンを思い出したという方もいます。自分の中でどこが一番思い出されるかは分かりません。いろんなプロフェッショナルの方に手伝っていただきました。
子ども向け料理本「とびきりおいしい おうちごはん」
料理人になったきっかけ
そもそも料理人になったのはお母さんの紘子さんが料理教室を50年以上やっていました。しかしお母さんは憧れていたというよりは避けていましたが、結局こうなったそうです。
お母さんの影響
お母さんは料理に関しては出し惜しみをせず、たっぷりで愛情がありました。いろんな友人が集まる家でしたが、いつでも誰がいつ来てもその人に合わせてご飯を出してくれました。
子供の友達には年齢に合わせて、そして父親の飲み会の後にやってきた方にはお腹に優しい食事を用意していました。その場で「あら大変」と言ってすぐに冷蔵庫を見てアドリブで料理をしてくれました。嫌がることはありませんでした。
そんなお母さんから受け継いだレシピがとびきり美味しいおうちご飯の本にも掲載されています。
シェファーズパイと食の国境
シェファーズパイです。いわゆるミートソースとマッシュポテトで、どこの家庭でも馴染みのある素材ですが、イギリスでもこういうご飯を食べているのか意外と近いなと感じました。意外と名前が違うだけで食べ物には国境はないと感じています。
料理工程の絵とイラストレーターの三宅さんの提案
お料理の完成品は写真ですが、お料理の工程は全部絵にしています。三宅さんという方が「せっかくなら全部書きます」と言われました。かなり大変だったと思いますが、やってくれました。一番大変だったのはおにぎりで、力加減などを伝えるのが難しかったということですが、逆に写真より伝わるものができたと考えています。虎に翼を手掛けられていた方です。
時間をかけた料理と愛情
この速さが求められる時代にわざわざ時間をかけましたが、それで読まれる方も受け取ってくれるのではないかと考えました。味わい深いし、弱火、中火の火の加減もわかりやすいですよね。これは絵じゃないとできません。全てが愛情です。子供向けの本ですが、大人こそ使って欲しいなという読者の口コミ感想も入ってきています。
野村さんの仕事部屋
野村さんの仕事部屋も紹介されました。なんと素敵な部屋ですね。去年リノベーションしたばかりだそうです。考えたのは循環する家づくりです。生け花も自分でされています。初代は繰り返し使えるものを選びました。
エッグペイントとリサイクル素材
天井や壁の塗料は「エッグペイント」という卵の殻が入ったペンキ素材です。汚れたら何度でも塗り替えてあげると厚みが増してきて風合いが増すということで楽しみにしています。食品工場から出る大量の卵の殻に珪藻土をブレンドしたものです。改修工事した時にトラックいっぱいにゴミが出てしまいました。あのゴミがどこに消えて行くんだろうと罪悪感がありました。材料もなるべく次誰かが住んだり壊した時も土に帰るとか、少しでもそれに近いものにしたかったということです。
テーブルと和紙のリフォーム
テーブルは天板に和紙を貼ってリフォームしました。この状態も綺麗ですが、経年変化の楽しみもあります。また、気分転換や張り替える時に張り替えることもできますし、またその職人にも会うことができます。お付き合いが1回で終わらないことも面倒なようで、それが楽しみです。和紙のカーテンです。貼り合わせたところに影ができます。厚みの差が風合いになります。
おしゃれなキッチン
一番長い時間を過ごすキッチンもおしゃれです。ここでも循環を意識した素材です。タイルは生活で出るゴミを原料としたリサイクルタイルです。カラフルです。多治見が大量の産地で、お伺いした時に生活ゴミを含んだタイルを作り始めていると聞きました。毎日生活ゴミを出している身としては、また再利用になるのであれば少しは罪悪感が減るのかなと思って、経年変化を自分自身で体験しながら自分の経年変化とともに楽しめたらいいなと思って使っています。
素材のこだわり
様々なこだわりが詰まっています。とっても素敵ですね。一応この和紙もちゃんとコーティングしてあって、水の中につけておいても大丈夫なぐらいです。100年もつなんとかというのは目標になっています。100で終わるのではなく、そこに重なっていくグラデーションが大事で、次につなげていくことが重要です。100年のうちに何回か繰り返されることを今は大切にしています。100年持つことは1回限りのことではなく、繰り返されることではないかということです。
再利用の意義
また、素敵だと感じることは人それぞれですが、今後リフォームが増えていく際にはこういう再利用できる素材を使うことも意識してやってほしいということです。
波多野さんという方は和紙の職人さんはいろんなところで引っ張りだこですが、「もっと暮らしの中で取り入れていかないと残らない」と考えています。昔は家を作ると言うと大工さん、左官さん、そして和紙の職人さん、襖や障子の職人さんも入っていましたが、今はそういったことはありません。
このタイルなども原材料の土がもうないという時代になっています。でもこの色も狙って出したのではなく、すごく自然でいい色ですよね。いい意味で楽しめます。数年後どんな色に変わっていくんでしょうか。
日々の生活の豊かさ
いろんなことを知るだけでも、いろんなことを思い出して、日々の生活が豊かになります。あそこであの人はどんなことをしてるのかなと思いを馳せます。その引き出しがたくさんあるというのは悪いことではないと考えています。
衣食住とSDGs
野村さんは衣食住をテーマにした展覧会をやっています。今、茅葺き屋根がSDGsで昔当たり前だったものが周回遅れの最先端になっているということです。包まれるような空間があります。
手書きのお手紙の良さ
手書きのお手紙というのもいいですよね。やはりメールなどの文字とは違った気持ちが伝えられます。
ここから
ここまで
コメント